■特集:どうなる2025年入試
実用英語技能検定(英検)などの英語民間試験を入試に取り入れる大学が増えています。試験のスコアによって入試の点数に加点したり、英語の試験が免除になったりするほか、独自試験の代わりに活用する大学も出ています。(写真=Getty Images)
「準1級合格で14点加点」も
英検の2023年度の志願者数は年間約450万人で、うち約326万人が中学生・高校生でした。文部科学省の調査によると、英検準2級相当以上の英語力を持つ高校3年生の割合は、21年で46.1%、22年で48.7%、23年で50.6%と少しずつ伸びています。
中高生が在学中に取得する資格の定番ともいえる英検を、近年は入試に活用する大学が増えています。早稲田大学国際教養学部の一般選抜では、出願時に一定の条件を満たす英検、TOEFL iBT、IELTSなどの試験結果を提出した受験生を対象に、合否判定に用いる得点を加点する制度を取り入れています。英検については、スコアではなく級の合否が評価の対象で、加点される得点は2級合格で7点、準1級で14点、1級で20点です。
早稲田大学の文学部と文化構想学部が実施する一般選抜の「英語4技能テスト利用方式」は、出願時に一定の条件を満たすテストスコアを提出することで英語の試験が免除され、国語と地歴(日本史または世界史)の2教科で合否を判断します。この方式では、英語民間試験のスコアが評価の対象となり、英検の場合はCSEスコア(技能別スコア)が各500点以上、総合2200点以上が条件となります。
中央大学の法学部、経済学部、商学部では、「英語運用能力特別入学試験」と名づけた独自の総合型選抜を導入しています。この入試方式は極めて高い英語力を持つ生徒を対象としており、例えば法学部の場合は英検1級、TOEIC L&R 785点以上などが出願資格です。選考は小論文と英語、それに日本語と英語による面接で、出願時に提出する大学所定の面接質問用紙には、海外在留経験や留学経験を問う項目も含まれています。
なお、提出するスコアや合否の証明書については、「出願期間初日からさかのぼって2年以内に受験したもの」などと取得期日の規定を設けている大学が多いため、事前の確認が必要です。
独自試験の代わりに英検・共テを活用
芝浦工業大学は、25年度入試から前期日程と全学統一日程で英語の独自試験を廃止し、英検と大学入学共通テストの点数を活用する選抜方式を新設します。
前期日程A方式、全学統一日程A方式は、英検のCSEスコア、または共通テストの英語の点数を独自の計算式で100点満点の評価に換算して合否判定に用いる方式で、23年度入試から後期日程でのみ実施していました。受験生は、英検と共通テストのスコアの両方を提出することも可能で、その場合は換算後の得点が高いほうを合否判定に用います。後期日程での過去2回の実施から得たデータでは、約半数の受験生が共通テストのみ、約2割が英検のみ、残り3割が共通テストと英検の両方を出願時に提出していました。
一方、前期日程B方式、全学統一日程B方式は、17年度入試から実施していた「英語資格・検定試験利用方式」を名称変更したものです。英検のほかTOEFL、IELTSなどの利用も認められており、いずれかのテストで大学が設定する基準値以上のスコアを取ることが出願資格となります。英検の基準値は、英検2級の合格ラインにあたる1980点です。
「一発勝負」を避けて、実力を評価
入試・広報連携推進部の土屋公平さんは、独自試験の廃止や新方式導入の背景を、こう説明します。
「入試に関しては、工学の素養も含む文章題など独自性のある問題を出すことも大切ですが、ベーシックな力を評価できる問題を活用したほうがいいと考えました。そのための問題を学内で作るか、外部の試験を使うかについては、実績と信頼性がある英検などのテストを利用することが、入試の合理化という意味でも、4技能を公平な基準に沿って評価できるという意味でも、最適と判断しました」
A方式で、英検や共通テストのスコアを100点満点に換算するための式(上図参照)は、募集要項で公開されているため、受験生は自身の持ち点を知ったうえで出願できます。
「受験生や保護者からは、『合格ラインはどの辺りになりそうですか』との質問をいただくことがありますが、正直やってみないとわからないところはあります。ただ、この換算式は過去の受験者の英語力など複数のデータに基づいて作成したものなので、本学が求める英語力やこれまでの合格水準から大きく外れることはないと考えています」
英語の入試について、本番での一発勝負を避けられる点は、A方式とB方式に共通していますが、出願の際は「得点換算」と「出願資格」のどちらが自分に合った方式なのかを見極める必要があります。
「A方式の場合、英検や共通テストで高いスコアを取れば換算後の得点もそのぶん高くなるため、英語を得点源にしたい受験生に有利と言えます。一方、B方式は数学の配点が200点と高く、英語は基準値以上であれば、ギリギリのスコアでも飛び抜けて高いスコアでも、評価は同じです。英語よりも数学や理科で勝負したい受験生には、B方式が好意的に受け止められているようです」
実践で役立つ英語力は必須
芝浦工業大学は、14年に私立の理工系大学としては唯一、文部科学省のスーパーグローバル大学に選ばれています。
「大学の国際化や世界で活躍できる学生の育成にも積極的に取り組んでおり、多くの卒業生が海外の企業などでも活躍しています。現地の人たちとやり取りをしながらプロジェクトをまとめるには、実践で役立つ英語力が必須です。入試で利用する英語の選抜方式はそれぞれ違っても、入学後は授業や留学プログラムを通じて、全学生に生きた英語を身につけてほしいと思っています」
英検は、25年どから準2級と2級の間に、「準2級プラス」が新設されます。英検をはじめとする英語民間試験は、英語学習の目標としてだけでなく、大学受験を有利に進めるための武器としても、ますます注目を集めそうです。
(文=木下昌子)
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